技術を伝えるということ~フィリピンでの技術指導を経験して~

寄稿者:竹山廣光 (2013-14年度、2016-17年度第2760地区VTTチームリーダー)

2014年と2016年に、私は国際ロータリー第2760地区(愛知県)の職業研修チーム(VTT)プロジェクトの一員として、フィリピンの医療関係者に腹腔鏡手術の技術指導を行う機会をいただきました。これは、日本からフィリピンに赴いての指導と、フィリピンから日本に受け入れる研修を2度ずつ行う、大変充実したものでした。シンポジウム

このプロジェクトに関わったきっかけですが、私は消化器外科医として腹腔鏡手術の推進と実践をしています。腹腔鏡手術とは、開腹せずにお腹に小さな穴をいくつか開け、細いカメラ(腹腔鏡)を挿入して内部をテレビモニターに映し、モニターで患部を見ながら別の穴から挿入した特殊な手術器具を操作して様々な処置を行う手術です。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の回復が早いなどの利点がありますが、難易度が高く相当な訓練が必要です。私の先輩である江崎柳節先生(第2760地区パストガバナー)の推薦もあり、この腹腔鏡手術の先端技術をフィリピンの医療関係者に伝えるプロジェクトのリーダーとして声をかけていただきました。実際に手術ができるよう消化器外科医4名、臨床工学技士1名、手術室看護師1名の計6名のチームを編成して、1度目は2週間、2度目は8日間の日程でフィリピンに赴きました。

派遣先は国際ロータリー第3780地区(フィリピン・ケソン市)にあるケソン市立総合病院でした。ベッド数は250床で、地域の中核病院として主に貧困層を対象としている病院です。はじめは現地の医療設備や医療スタッフの熟練度の違いなど、戸惑うこともありましたが、現地の方々は大変熱心で、研修は早朝から夕方まで続きました。研修では術前ミーティング、手術方法の説明や器具の確認、腹腔内での操作の練習として、プラスチック製の箱に内視鏡の器具を取り付けての操作などを指導しました。滞在中に執刀した腹腔鏡手術は予定をはるかに超え、手術指導(1)1度目は22例、2度目は15例に上りました。

また、訪問中に2日間のシンポジウムが開催され、200人以上の聴衆への講義や、ライブ手術も2例ずつ行いました。ライブ手術では、手術室での様子がシンポジウム会場のスクリーンに中継され、私がマイクを装着して手順を解説しながら執刀すると、会場からは熱心な質問を受けてなかなか次に進められないほどでした。1度目の滞在ではUNTVというテレビ局の取材もあり、この事業に対する現地の方々の関心と期待を実感しました。また、研修には派遣元の第2760地区のガバナーや、VTT委員長の方たちもご同行くださったおかげで、私たちも現地のロータリーの方との交流や歓迎のイベントにも出席させていただき、多くの方との温かい交流ができました。

訪日チームの受け入れは、フィリピンを訪問した私たちメンバーの所属先である、名古屋市立大学病院と岐阜県の松波総合病院で、手術の見学、日本の医療環境の学習をしていただきました。来日メンバーは1度目が外科医4名、看護師1名の計5名、2度目は外科医3名、麻酔科医3名、看護師1名の計7名で、それぞれ1週間の滞在でした。研修の場を日本に移すことで、来日メンバーの医療関係者にとっては更なる技術向上につながるものになったかと思います。

実はこのプロジェクトは当初、2014年に日本から訪問する技術指導のみが予定されていました。しかし訪問中に両地区の交流が拡大し、現地の病院関係者や第3780地区のロータリーの方々からの強い要望を受け、来日研修チームの受け入れ、更には2度目の研修のリクエストをいただき実現しました。これは、このプロジェクトが、将来の医療サービス向上につながる本当に必要なものであったからこそだと思います。

これまで一般的な医療支援といえば、医薬品や医療機器などの寄付が中心であったと思います。しかし、私が関わらせていただいた国際ロータリーの職業研修チーム(VTT)プロジェクトでは、短期間のうちにフィリピンで実際に手術の執刀をし、技術指導、ライブ手術、シンポジウムと、極めて充実した参加者にとっても大変やりがいのある医療支援でした。特に、手術の執刀は人の命に関わるものであり、私たちは医師としての専門分野や経験を持っていますが、海外での執刀はなかなか個人の力では実現できません。

2010年に始まったVTTプログラムにおいて、私たちの医療研修事業が現地で実際に医療行為を行う初めてのケースだったそうです。これは、既に国際ロータリーの皆様が長年にわたる交流とお互いを助け合う実績があったこと、そして派遣元の第2760地区のVTT委員長の福田哲三さんをはじめ関係者の皆さんが、現地の臨時医療許可の取得やケソン市政府との覚書の締結、プロジェクトの費用をまかなう国際ロータリーの補助金の申請など、膨大な準備を担い奔走してくださったことで実現したことでした。この活動に対しRotary Internationalから2015-16年度ロータリー学友世界奉仕賞(地域賞)をいただきました。大変誇りに思います。

国際ロータリーのコンセプト、「持続可能性」を重点に置くこの取り組みは、多くの人を通じて広がり、地域社会に発展につながる支援であることを、参加させていただいて実感しています。このような素晴らしい活動に私どもを選んでいただき感謝しております。ロータリーの皆様の情熱と献身、行動力の全てに心から敬意を表します。

<寄稿者紹介>
竹山 廣光

リーダー 竹山廣光(タケヤマ ヒロミツ)拡大
名古屋市立大学医学部名誉教授 (派遣当時は教授)
2013-14年度 D3780地区への第1回VTT チームリーダー
2016-17年度  D3780地区への第2回VTT チームリーダー
研修テーマ: 腹腔鏡手術の技術指導 (2回とも) *ともにグローバル補助金事業

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