なたね油で福島再生の可能性にかける

寄稿者:  早川 敬介(郡山北ロータリークラブ、第2530地区ロータリー財団委員長)
                石井秀樹(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター 特任准教授)

なのはな

一般社団法人 南相馬農地再生協議会の会長 杉内 清繁さん

福島県の浜通り地区は、地震・津波・放射能汚染の複合災害を受けました。地震や津波で全国で2万人以上の尊い命が失われ、住居や農地をはじめ各種インフラが壊滅的被害を受けました。また放射能汚染でピーク時は県外避難者が16万人を超えました(福島県公表)。

今も風評被害で農業経営が立ち行かない農業者も多く、離農・耕作放棄が進んでいます。このような中、郡山北ロータリークラブは福島大学と連携し、離農・耕作放棄が顕在化した福島被災地で、菜の花の栽培と搾油により安全・安心な食用油を生産することで、農業者の営農再開を後押しし、農地の保全・活用を図るプロジェクトに乗り出しました。このプロジェクトは、ロータリー財団グローバル補助金を活用し、日本の複数の地区・クラブおよび韓国と台湾とアメリカの地区・クラブの支援を受けて実現したものです。

セシウムの特性に注目

福島を汚染した放射能は主に「セシウム」です。セシウムは水に溶けやすく、油に溶けにくい性質があり、菜種にセシウムがあっても、搾油と精製をすれば、油にはセシウムが移行しません。原材料に放射性セシウムが含まれていたとしても、搾油と精製による食品加工を通じて安全・安心な油が生産できるのです。

こうした取り組みは、チェルノブイリ原発事故を経験したウクライナでも展開され、「チェルノブイリ救援・中部」や「菜の花プロジェクト・ネットワーク」の支援を受けて、南相馬市で2011年からスタートしました。

キャラクターづくりや搾油設備で土台固め

栽培面積が徐々に増え、2017年は南相馬市内で約70ヘクタールの菜種が栽培されました。また地元の相馬農業高校とも連携し、「油菜ちゃん」というマスコットキャラクターを作り、食用油だけでなく、ドレッシングやマヨネーズなどの六次産業化にも取り組んでいます。

油菜ちゃん

一方、その可能性を実現するにはさまざまな課題もあります。まず南相馬市には搾油施設がなく、これまで栃木県で搾油・充填・包装をしてきました。輸送に伴う労力・コストが膨大でした。また栃木で搾油できる量にも限界があり、将来的な増産を視野に入れると、南相馬に搾油施設を設けることが不可欠でした。

そこで、南相馬農地再生協議会が整備した「南相馬市信田沢搾油所」に、搾油器などの設備を導入。この搾油機では、一日500キログラムの菜種から150キログラムのなたね油を生産でき、年間250日稼働すれば、125トンの菜種を処理できます。

自治体間の連携がカギ

南相馬のお隣にある飯舘村は全村避難が余儀なくされましたが、帰還が始まっています。農業の本格再開はこれからですが、安全・安心な食用油が作れる菜の花に注目が集まっています。

ただ耕作者の不足、ここ数年の長雨(異常気象)などから、収穫適期・播種適期の作業を逃し、連作障害の影響もあって、菜種収量が伸び悩んでいます。菜種の需要に供給が追い付かない現状では、飯舘村との連携で打開したいと思います。飯舘村で栽培した菜種を「南相馬信田沢搾油所」で搾油ができないかと考えています。

また標高500メートル程ある飯舘村は、青森県南部と同じぐらい冷涼な気候です。南相馬市との気候差から播種適期・収穫適期がズレルため、南相馬市と飯舘村の農業機械・作業者を互いに利用できます。農業機材費や人件費を抑制しながら、菜の花栽培のネットワークを県内各地に広げるとともに、菜種の供給力を高めたいと思っています。

福島をなたね油の主要生産地に  “搾油マイスター”の育成もめざす

今、福島県浜通り地区では、菜の花栽培面積が100ヘクタールに迫る勢いで広がっており日本最大の菜の花産地になろうとしています。菜種が安定的に確保できれば、国産の食用油の採算量も日本最大のものとなります。現在、なたね油の自給率は0.05%程度とされ、遺伝子組み換えでない国産のなたね油は貴重です。

また新たに作った搾油所で雇用したスタッフの研修活動も後押しし、近い将来“搾油マイスター”を育てたいと考えています。

「油菜ちゃん」の販路確保が課題ですが、良質で安価な国産なたね油が福島から生産・供給される体制が、今作られようとしています。経営者の集まりであるロータリーと、農業の専門家の集まりである福島大学が、これからも福島県浜通り地区の菜の花栽培と搾油による復興支援活動を展開していきます。

このプロジェクトを通して、福島県の「2011年3月11日の東日本大震災」と「東京電力福島第一原子力発電所からの放射線被曝」と「風評被害」からの復興が発信できればと思っております。

搾油所

【関連情報】
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