脱北者のロータリークラブ

【クラブ会長とのインタビュー】1042

大半の会員が脱北者であるロータリークラブが韓国にあります。蔚山自由(Ulsan Jayu)ロータリークラブです。韓国には、命を落とすリスクを冒して北から逃れてきても、その後の生活で困難を経験する人びとが大勢います。そのような中、脱北者が安らぎを得て、誇りをもって新天地で活躍できるよう、韓国のロータリークラブが人道的奉仕プロジェクトを実施しています。

この度、同クラブの会長であるソギ・ジュユンさん(Ju-Eun Seok)に、自らの脱北経験と彼女の人生におけるロータリーの意味についてお話しいただきました。

—— 韓国に逃れてくる前に、どのような困難を経験されましたか?

1997年に、高校の友人と一緒に国境の川を渡って北朝鮮から抜け出しました。中国・遼寧省で農家をしていた男性と結婚し、そこで6年間を過ごした後、2003年に韓国にたどり着きました。

中国での生活は不安と辛さに満ちたものでした。というのは、見つかった場合に北朝鮮へと強制送還される可能性があったためです。しばしば夫と私は、中国当局の取り締まりを避けるために夜逃げをしなければなりませんでした。

—— 韓国で生活を始めたころは、どのような困難がありましたか?

話す言葉は一緒で、歴史、文化、慣習など多くの点で類似しているため、韓国の人は北朝鮮の人と似ているだろうと考えていました。でもそれは間違いでした。それまでに経験したことがないシステムで社会は動いており、私はひどく当惑し、挫折感を覚えました。何よりも言葉が壁となりました。「株式」や「投資」といった資本主義の用語を全く知らないため、人びとの言っていることが分からなかったのです。それに、日常の会話に英語の言葉があふれていました。

コミュニケーションの壁に加えて、人とのつながりがありませんでした。知っているのは、私のように北から逃れてきて、韓国のことが全く分からない人たちばかりです。ですから私は、学習を重ね、突き当たる課題を一つひとつ解決していく必要がありました。

—— ロータリーとのつながりは、どのようにしてできたのでしょうか?

この15年間、知り合った多くの人びとに支えられて過ごしてきました。これらの支援や励ましがなかったら、私は今ここにいないでしょう。何年か前、その恩返しをしようと、脱北者の友人たちと一緒に、地元の児童施設でボランティア活動を始めました。

2016年に、当時の第3721地区ガバナーで、国家統一諮問委員として脱北者への支援を行っていたチョイ・ハエサンさんが、脱北者たちで新しいロータリークラブを設立することを提案してくれました。チョイさんは、「韓国社会でのつながりがない私にとって、ロータリーが関係を築く足掛かりになる」と話してくれたんです。また、ロータリーでは、帰属意識をもって人びとに支援の手を差し伸べる喜びを得ることができるとも言ってくれました。

チョイさんには、新クラブの面倒を見てくれる既存のクラブも紹介してもらいました。そうして2016年7月、蔚山自由ロータリークラブが設立されました。

—— ロータリーは、あなたやほかの脱北した会員の方々にどのようなインパクトをもたらしてきましたか?

私たちが児童施設で奉仕活動を始めた第一の理由は、多くの会員が北朝鮮から逃れる際に家族と離れ離れになってしまったからです。

毎月最後の土曜日に施設を訪れて、施設を掃除し、子どもや赤ちゃんと一緒に時間を過ごしています。そんなとき、自分たちの心も癒されるように感じるんです。

また、私たちは、この地域に逃れてきた脱北者の定住支援を行い、ロータリーのネットワークを生かして、雇用、医療ケア、法律手続き、教育面の支援も行っています。

—— クラブの今後のビジョンについて教えてください。

最近、脱北者ではない人が2名、クラブに入会しました。これはクラブが発展していることを示す良い兆候だと思います。ほかの活発なクラブと同じように、多様な会員によって多様なプロジェクトが実施されるクラブになればいいなと感じています。

とはいえ、クラブで最優先となるのは、北からやってくる新たな難民を支援すること、そして、北朝鮮の人たちもまた、平和を願い、奉仕の心をもっていることを韓国や世界中の人びとに伝えることです。ロータリー会員として私たちは、北朝鮮の人民に対する偏見や誤解を解消し、南北間の緊張を緩和することに貢献したいと感じています。

(執筆担当:ロータリー職員、Soomin Kim)

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脱北者のロータリークラブ」への1件のフィードバック

  1. 現在、わが国(日本)と隣国の韓国、北朝鮮との関係が政治的に不安定になっています。RIスタッフのキム氏のすばらしい投稿を興味深く読みました。私は北朝鮮からの脱北者を主体としたロータリークラブの存在を知りませんでした。この記事によって、私はロータリークラブの多様性を改めて感じました。

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