新しい平和拠点をつくる

~広島・長崎 爆心地 中間点 上毛町-未来へつなぐ平和の架け橋事業~

寄稿者:錦織 亮雄(広島東南ロータリークラブ、創立60周年記念事業実行委員長)

Three mayors

(左から)松井一實氏(広島市長)、坪根秀介氏(上毛町長)、田上富久氏(長崎市長)

広島東南ロータリークラブは、被爆都市広島の中心部をテリトリーとするクラブとして60年前に創立されて以来、多様な平和推進活動に力を入れてきました。創立5年目には、「知客寮」(チカクリョウ)という原爆孤児の帰郷のための家をつくりました。1982年にはパールハーバー・ロータリークラブ(米国ハワイ州)と姉妹縁組を結び、「ヒロシマ」と「パールハーバー」という戦争体験の恩讐を超えて交流や共同奉仕活動を続けています。最近では、広島の被爆樹木の保護や苗などを各地に配布する平和運動の支援にも力を入れています。

ロータリーでの平和推進活動は、多くの難しい側面をもっています。「平和」という誰もが望む大きく深い命題では、その到達への道筋は多様であり、到達点さえも定かではありません。それゆえに活動は、形骸化したり、抽象的であったり、持続性に欠けたりする恐れがあったり、夢想的な平和原理主義に陥って孤立してしまう場合もあります。実践的な平和活動は、いずれも小さな源流の一滴であり、祈りのように純粋ですが、その効果には常に不安とむなしさがつきまといます。

特に、広島や長崎での平和推進活動は、難しい呪縛が伴います。人類史で初めて原子爆弾の惨禍に遭った広島と長崎は厳然たる平和拠点ですが、核廃絶運動の先頭に立つ絶対的使命を持っているがために、「平和」という命題にとってあまりにも特別な場所です。広島・長崎は75年間核兵器の非人道性と「核なき平和」を訴え続け、75年間核兵器は使われていませんが、世界は平和ではなく「核なき非平和」が蔓延しています。現在、「核なき非平和」の主犯が戦争暴力に加えて貧困・疾病・テロ等となっていても、広島・長崎は「核兵器の廃絶が恒久平和をもたらす」と頑強に訴え続ける使命があり、その平和理念は非現実化の傾向にあります。75年間核兵器が使われることがなかったことには核兵器の抑止力が無視できなくても、「核兵器は絶対悪であり抑止力などあってはならない」と主張し続けなければならないのです。

被爆地ではない平和拠点を
2020年は広島・長崎への原爆投下から75年になり、原爆の後「75年は草木も生えぬ」と言われた節目の年です。この節目に重なるクラブ創立60周年にあたり、その記念事業として意味ある平和推進事業をと考え出したのが、被爆地としての呪縛を持たない「第三の平和拠点」の創出でした。

Mapその場所については、被爆地でもなく被爆者もいないが原爆に関係のある場所として、広島と長崎の中間点にある福岡県築上郡上毛町(コウゲマチ)を選びました。町長や町議会などに説明・提案し、町をあげての賛同を得て、「広島・長崎爆心地中間点上毛町-未来へつなぐ平和の架け橋事業」として実現することになりました。

事業の発足イベントが、国連が定めた世界平和デーである2019年9月21日に開催されました。当日は上毛町民、子ども代表、関係者に加え、広島と長崎の市長、広島東南、長崎南、地元の豊前の三つのロータリークラブ会員、インター・アクト・クラブ代表など、総勢400名余りが参加。町内の大池公園で被爆樹木2世の植樹式とモニュメントの除幕式を行ったほか、げんきの杜ホールで平和記念式典が行われ、盛大な事業となりました。

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植樹をする福岡県立青豊高校インターアクト部メンバーと上毛中学校生徒会メンバー

植樹式とモニュメント除幕式では、上毛町と上記の三つのロータリークラブが協力して、大池公園内の大池両岸に被爆樹木2世の苗を植樹し、それぞれ「広島の丘」と「長崎の丘」と名付けました。また、平和の架け橋の象徴としてその両者を結ぶ地点に創られたモニュメントの除幕を行いました。

平和記念式典では、坪根秀介上毛町長が「広島・長崎爆心地中間点上毛町平和宣言」を発表しました。松井一實広島市長は、「被爆樹木2世はもの言わぬ証人であり、町の若い世代に平和を願う心を育んでほしい」と述べ、また田上富久長崎市長は「仲間が増えた思いで、未来につながる取り組みを歓迎したい」と述べられました。

「被爆者の心」と題した記念講演では、私が自身の被爆体験を語りました。原爆犠牲者のせめてもの「死に甲斐」としての平和希求を語り、必死で生き抜いてきた被爆樹木の姿を紹介して、被爆者や被爆地を超えた開かれた平和運動の必要を訴えました。児童劇団「I PRAY」による創作劇では、被爆という重い現実をテーマとしながらも、平和な未来へと祈りを込めて歩もうとする姿が明るく感動的に表現されました。

広島、長崎に続く第三の平和拠点がつくられ、両被爆地と被爆者の思いを汲みながら、それを超えてさまざまな思いが交錯する開かれた平和への活動が始まります。今後は、福岡県と上毛町、ロータリークラブ等の協力で、ここに植えられた被爆樹木の苗の成長とともに、特に世界中の子どもたちや若者が自由に学び交流する拠点として大きくその意味を広げていくことを願っています。3 photos

>> 広島・長崎爆心地中間点上毛町-未来へつなぐ平和の架け橋事業(上毛町ウェブサイト)
>> 大池公園へのアクセス

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